『タンデム』『迷い猫』『今宵かぎりは…』ほか脚本家小林政広と組んだ秀作を経て、『短篇集さりゆくもの もっとも小さい光』のサトウトシキが企画と監督を務めた最新作。延江浩の短篇小説集「7カラーズ」(水曜社刊)の一編を映画化。言語化できない感情が映像の奥から浮かび上がる演出はサトウトシキの独壇場。他者との距離感が希薄になった未曽有の時代に贈る、愛を探す人びとの愚かで滑稽でちいさな物語。原作者と監督のタッグは『アタシはジュース』(1996)以来となる。主演は『花束みたいな恋をした』『はい、泳げません』『激怒』など、注目作への出演が続く影山祐子。生きる実感を持てないままに、性にのめり込んでゆくでもなく、声高に叫ぶでもなく、それでも人間らしいつながりと愛を求めてさすらうヒロイン・仁絵を演じて、唯一無二の存在感と大胆な演技で初主演を鮮やかに飾る。相手役の原田喧太は本業がギタリストながら、父・原田芳雄を彷彿とさせる好演を披露。本作は偶然にも父親の遺作となった『大鹿村騒動記』と同じ延江浩の小説にもとづいている。ヒロインの叔父役に『信虎』(2021)の伊藤洋三郎が扮し、飄々とした演技をみせる。
原作は延江浩。作家・村上春樹がホストを務める『村上RADIO』(TOKYO FM)などの番組を手がけるラジオ・プロデューサーとして活躍するかたわら作家としての顔を持つ彼の短篇小説集『7カラーズ』(延江ローレン名義、水曜社刊)から2002年度リトルモアストリートノベル大賞佳作の「さすらいのボンボンキャンディ」を映画化。脚本はサトウの助監督でもある十城義弘と『イチヂクコバチ』(2011年)『青二才』(2013年)『もっとも小さい光』などでサトウとコンビを組む竹浪春花。
今回、シネマスコーレでの最終上映となる楽日の1月6日(金)に舞台挨拶行われ、主演の影山祐子さんが登壇!
<NOW EDITING>
『さすらいのボンボンキャンディ』
2022年12月31日(土)〜2023年1月6日(金) 、シネマスコーレにてROADSHOW
STORY
仁絵34歳。夫が海外に長期出張中の彼女は日々あてどなく街をさまよい、無為な時間を酒とともに流し込んでいる。マサル48歳。電鉄会社の車掌。運転士になりたかった夢は国家試験に三度落ちてあきらめた。偶然に知り合ったふたりは意気投合して、ごく自然に接近する。互いに家族のある身ながら逢瀬を重ねる男と女。ある日マサルが仁絵の前から姿を消してしまい、彼女はほかの男たちと寝てみるが、心の空洞が埋まることはない。ウルサクて、退屈な人間のつくった街で仁絵はマサルの影を求めてさすらう。ひとりの女性の性の迷宮と罪の物語の行方は――。
DATA
●企画・監督:サトウトシキ
●原作:延江浩(水曜社刊『7カラーズ』)
●出演:影山祐子、原田喧太、雅マサキ、足立智充、嶺豪一、飯島大介、辻しのぶ、伊藤洋三郎
R15+
(C) 映画「さすらいのボンボンキャンディ」製作委員会/延江浩