さまざまな役どころを自在に演じ分ける本格派俳優として注目されている仲野太賀と“乃木坂46”を卒業し新たな一歩を踏み出した衛藤美彩のダブル主演映画『静かな雨』が、2月7日(金)より全国順次公開。
共演は、三浦透子、坂東龍汰、古舘寛治、川瀬陽太のほか、萩原聖人、村上淳 、でんでん等、日本を代表する俳優たちに加えて、『殯の森』『あん』などで世界的な監督として知られる河瀨直美監督も女優として出演。監督は、2017年モスクワ国際映画祭で国際映画批評家連盟賞とロシア映画批評連盟特別表彰をダブル受賞した『四月の永い夢』(18)、そして『わたしは光をにぎっている』(19)と活躍する若き俊英 中川龍太郎。詩人、エッセイストでもあり、独自の世界観を持つオリジナル作品を作り続けてきた彼が、初めて原作の存在する作品に挑み、新たなアプローチで新境地を拓いた。原作は、2018年映画化もされた2016年本屋大賞受賞のベストセラー小説「羊と鋼の森」の著者・宮下奈都のデビュー作で、2004年文學界新人賞佳作に選ばれた「静かな雨」(文春文庫刊)。音楽は、国内外で活躍する音楽家で、『おおかみこどもの雨と雪』(12)、『未来のミライ』(18)等の映画音楽を手掛ける高木正勝。映像全編をノンストップで流して即興で音楽を作る、という手法で本作に臨んでいる。透明感ある豊かな音楽が、繊細かつドラマチックに作品の世界観を支える。
今回、公開を記念して2月8日(土)、シネマート新宿で公開記念舞台挨拶が実施され、仲野太賀さん、衛藤美彩さん、でんでんさん、中川龍太郎監督、さらに特別ゲストとして原作者の宮下奈都さんが登壇!
本作は、足に麻痺があり、穏やかな“あきらめ”を秘めた若者・行助(仲野)と、常連客に愛されるたいやき屋を営む、事故の後遺症によって新しい記憶を留めておけなくなったこよみ(衛藤)の、切望と背中合わせの希望に彩られた日々を描いた、静かで美しく、切なくて愛おしいラブストーリー。
そんな本作を見終えたばかりの観客の前に登壇した中川監督は「宮下さんが書かれた美しい原作を初めて読んだのが1年前のことになります。1年経ってこの映画の最初のお客さまに、皆さまになっていただけて嬉しいなと思っています」と感慨深げに語り、「初めて原作がある作品を作ったので、最初は不安もあったんですけど、素晴らしい仲間や先輩方に囲まれて作れたので、ここに立てて光栄だなと思っています」と晴れやかな表情を浮かべた。
また、本作が映画初主演となった衛藤は、乃木坂46在籍中に本作の撮影を行ったことを明かし「オファーをいただいたときには不安のほうが大きかったんですけれども、素敵なキャストの皆さまとスタッフの方々に支えられて、それから約1年経って、今日皆さんに見ていただけて、そこまでの過程が全部初めてだったので、こんなに嬉しい気持ちになったのも初めてで、とても嬉しい気持ちでいっぱいです」と目を輝かせ、「映画ってすごくいいなって、映画界の魅力に自分自身もどっぷり浸かってしまいそうなくらい、この作品が大好きです」とニッコリ。
そして、仲野は「衛藤さんのファンの方にお叱りを受けないかなと怖気付いています」と吐露して観客の笑いを誘い、「素晴らしいキャストの皆さまと、スタッフの皆さまと作り上げた、濃密な時間が刻まれた映画になっているので、どういう風に皆さんの元に届いて、どういう風にこの映画が広がっていくのかなって興味もあります。本当に嬉しくて、感謝の気持ちでいっぱいです」と語った。
さらに、本作を寝転びながらテレビ(DVD)で見たというでんでんは「無言のシーンがものすごく多いので、耳が遠くなったんじゃないかと思うくらいでしたが、太賀くんと衛藤さんのキメの細かい芝居が、同じ役者から見ても素晴らしいなと思って見ていました」と若手の2人を絶賛し、「静かで淡々と流れる映画の中で、細かい感情の起伏なんだけど、太賀くんと衛藤さんが上手に演じているのを見て、共演者としても痺れた映画でもありました」と吐露した。
撮影時のエピソードを聞かれると、本作を作る上で苦悩したという中川監督は「そういうところで、自分と太賀がぶつかるというか、気まずくなることがあったんですけど(笑)、衛藤さんがめちゃくちゃ空気が読める人で、衛藤さんがいなかったらもうちょっと現場の空気が暗かったかもしれないです」と明かすと、太賀も「確かに、中川監督とは同世代でもありますし、意見交換で激しめのディスカッションがあったかもしれないんですけど、衛藤さんが現場を明るくするパワーを持っていて、衛藤さんが現場に来るだけでみんなが明るくなるので、本当に助けられましたね」と衛藤に感謝。これに中川監督は「衛藤さん、本当にいい人。現場にご飯を作って来てくれたりね。無限ピーマンとか作って来てくれましたね」と衛藤に惚れ惚れ。
一方、衛藤は「私は太賀さんとのシーンが多かったんですけど、年齢も同い年ということで、想像していたよりも気さくで、カメラが回っていないとこでもたくさん話しかけてくださったりして、私も緊張がほぐれて楽しく撮影できたかなと思います」と太賀に感謝し返した。加えて、実際にたいやき屋に通って修行したという衛藤は「たくさん失敗したりもしたんですけど、最後はきれいに焼けるようになって、映画の中で食べているものは、私が実際に焼かせていただいたものもあって、それを太賀さんがすごく美味しそうに食べくれて、たくさん食べるんけど、いつ食べても初めて食べたときの美味しい顔をしてくれて、その姿に励まされたというか、本当に作っているかたはこういう気持ちになるんだなって体験させてもらいましたね」と笑顔を見せた。
イベント終盤には、本作の公開日でもあった2月7日に27歳の誕生日を迎えた仲野をお祝いするため、サプライズで宮下氏が登場し、仲野に花束を贈呈する一幕も。本作を見た感想を求められた宮下氏は「手触りがザラザラだったり、ツヤツヤだったり、本当にいい映画で、『ゆきさん』って呼んだ衛藤さんの声で、ゆきさん(行助)の世界が立ち上がった気がして、こよみさんの目と、行助さんの目が同じ色で、すごくよかったと思いました。すごく嬉しかったです」と感無量な様子だった。
2020年2月15日(土)よりセンチュリーシネマほかROADSHOW
(C)2019「静かな雨」製作委員会/宮下奈都・文藝春秋