▼映画ライター=尾鍋栄里子。C2[シーツー]、Kelly、朝日新聞ほかで執筆!
今回は現在絶賛公開中!40歳目前にして引きこもりでニートのダメ男・城宮と、小さな心と体に暗い事情を抱えた5歳の少女・ヨヨコの親子愛を描いた映画『ごっこ』をご紹介。
名古屋出身の熊澤尚人監督が描く『ごっこ』
『ごっこ』は地元・名古屋出身の熊澤尚人監督の最新作。とはいえこの映画、実は撮影されたのは2015~16年。様々な事情で完成が遅れ、原作者・小路啓介氏の不慮の死、キャストの清水富美加の出家騒動などが相次ぎ、お蔵入り寸前だったとか⁉ いや、ありえないでしょ。
なにしろパパやんこと城宮役、千原ジュニアのお笑い芸人とは思えない鬼気迫る演技、ヨヨコ役、平尾菜々花の強く真っ直ぐな眼差し、さらに演技派へと進化を遂げ、さり気ない好演でふたりを支える優香と、キャストたちがとってもいいのだ。その圧倒的な演技に引き込まれ、衝動的に手を繋いだパパやんとヨヨコの不器用な心の触れ合いを見守ることに。しかし、終盤の思わぬ展開にのけ反った!これは『愛しのアイリーン』『寝ても覚めても』に続く衝撃度!
熊澤監督は『君に届け』や『近キョリ恋愛』で、青春ラブストーリーの名手のイメージが強かったけど、昨年の『ユリゴゴロ』といい、本作といい、人間のダークな一面を描く手腕も確か。社会問題を内包した難易度の高い原作に挑んだ監督と、渾身の演技で魅せたキャストの想いが、観客に届けられて本当によかった。
TEXT=尾鍋栄里子
『ごっこ』
2018年10月20日(土)より名演小劇場ほかROADSHOW
(C)小路啓之/集英社 (C)2017楽映舎/タイムズ イン/WAJA
#エーガね